自動車脱炭素化の歴史と燃費改善 | 愛知県自動車販売店協会(略称:愛自販)

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自動車脱炭素化の歴史と燃費改善

自動車脱炭素化の歴史と燃費改善
自動車の脱炭素化は、単に環境保護のためだけでなく、大気汚染対策やエネルギー効率の向上といった様々な観点から、長年にわたって進められてきました。その歴史は、主に以下の3つの段階に分けることができます。
目 次

環境問題への意識の高まりと排出ガス規制の導入
1970年代〜1990年代)

1970年代:大気汚染問題の顕在化

1950年代にロサンゼルスで光化学スモッグが問題となり、自動車の排出ガスが原因の一つであることが明らかになりました。これを受けて、米国では1970年に「マスキー法」が制定され、自動車メーカーに排出ガスの大幅な削減を義務付けました。
これは世界で最も厳しい排出ガス規制の一つとされ、日本の自動車メーカーもこの規制をクリアするために、排気ガス浄化技術の開発に注力しました。

1972年12月にホンダはCVCCエンジンで、「マスキー法」の基準を世界で初めてクリアし、日本の自動車産業が技術力で世界をリードするきっかけになりました。

1978年には「日本版マスキー法」と呼ばれる「昭和53年排出ガス規制」というNOxの排出量を抑える世界でも厳しい規制が導入されました 。

1980年代〜1990年代:排出ガス規制と燃費基準の強化

1973年の第一次オイルショックでは、第四次中東戦争を機に石油価格が高騰し、それまで大気汚染が中心であった議論に、エネルギーの安全保障という新たな課題を加えました。この排ガス規制と燃費基準の強化は、自動車メーカーに内燃機関の効率の最大化という共通の技術課題を突きつけました。

1975年、米国では「CAFE規制」が制定され、自動車メーカーに企業平均燃費基準(CAFE)が義務付けられました 。

1979年、日本では「省エネ法」が制定され、乗用車の燃費基準が設定されました。燃費改善の技術は、燃焼効率の向上、車両の軽量化、駆動系の最適化に集約されます。
燃焼効率の向上では、1982年三菱ミラージュが国産車として初めて気筒休止エンジンを搭載、1989年ホンダが可変バルブタイミング機構「VTEC」を国産車で初採用し、 1996年には三菱が世界初の量産筒内直噴(GDI)エンジンを搭載 しました。

燃費を客観的に評価し、比較するための基準「10・15モード」という燃費測定方法も1991年に導入されました。
車両の軽量化では、1990年初代ホンダNSXに国産車として初めてフルアルミボディを採用し、軽量化技術の可能性を提示しました。
駆動系の最適化では、1984年スバルが国産車初の無段変速機(CVT)を「ジャスティ」に搭載しました 。これらの改良により、1993年に11.4km/ℓだった日本のガソリン乗用車平均燃費は、1998年に12km/ℓを超えました。排出ガス規制も段階的に強化され、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)などの削減が求められるようになり、この頃から、排気ガス浄化装置の高性能化が進みました。

1997年の京都議定書では、温室効果ガス排出量の削減目標が国際的に合意され(日本は2010年までにCO2排出量を1990年比で6%削減することを約束 )、自動車業界もCO2排出量削減への取り組みを加速させました。

ハイブリッド車や電気自動車の登場と普及
(1990年代後半〜2010年代)

1997年:ハイブリッド車の登場

1997年、トヨタが世界初の量産ハイブリッド乗用車「プリウス」を発売し、これは、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせることで、燃費を大幅に向上させ、CO2排出量を削減する画期的な技術でした。10・15モード燃費では28.0km/ℓという驚異的な数値を達成しました 。
ホンダは1999年に「インサイト」(10・15モード燃費35.0km/ℓ)、日産は2000年に「ティーノHV」(10・15モード燃費23.0km/ℓ)を発売するなど、ハイブリッド技術は日本の自動車メーカーが牽引する形で発展しました。
このようにプリウスの功績は、単に燃費向上技術の提供に留まらず、国内他社のHV開発を加速させ、HVがエコカーの代名詞として社会に定着する契機になりました。

2000年代以降:ハイブリッド車の多様化と電気自動車(EV)の台頭

ハイブリッド車は、燃費性能の高さと実用性から市場での存在感を高め、多くのメーカーが様々な車種にハイブリッドシステムを搭載するようになりました。
また、この頃から電気自動車(EV)の開発も本格化し、2009年に三菱が世界初の量産電気自動車「i-MiEV」(10・15モードで航続距離160km)を発売しました。当初は航続距離や充電インフラの課題がありましたが、徐々に技術が進化し、日産「リーフ」(JC08モードで航続距離200km)など量産EVが登場しました。

ハイブリッド、EVと並び、脱炭素化の究極の選択肢としてトヨタが挑戦したのが、燃料電池自動車(FCV)です。
2014年トヨタは世界初の市販型FCVである「MIRAI」(JC08モードで航続距離650km)を発売しました 。
一方、ガソリン乗用車の燃費測定モードもより現実の走行状況に近づけるよう進化して、2011年4月には「JC08モード」、2017年からは、世界統一試験サイクルで実燃費との乖離が少ない「WLTCモード」が導入されました。日本のガソリン乗用車平均燃費(JC08モード)は、2011年度の17.8㎞/ℓから2017年度には22.0㎞/ℓに、6年で23.6%も改善しました。

カーボンニュートラル社会に向けた取り組みの加速
(2020年代〜現在)

2020年代:カーボンニュートラル目標の設定

2015年のパリ協定では、世界共通の目標として、世界の平均気温上昇を産業革命前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求することが掲げられ、自動車メーカーが自主的に電動化へ舵を切る大きな契機となりました。多くの国や地域が2050年までのカーボンニュートラル目標を掲げ、自動車業界もこれに沿った取り組みを加速させました。

EVのラインナップが飛躍的に増え、航続距離も大幅に伸び、急速充電インフラの整備も進んでいます。
ハイブリッド車も、より効率の良いシステムやプラグインハイブリッド車(PHV)などが開発されています。
ガソリン車も内燃機関の熱効率を50%以上へと飛躍的に向上させることを目指しており、2030年度の目標値(WLTCモード)を25.4km/ℓとしています。

次世代技術の発展

水素を燃料とする水素自動車(HICE)や、合成燃料(e-fuel)など、EV以外の脱炭素化技術も研究開発が進められています。
政府はEV購入者への補助金を増額するなど、ガソリン車からEVへの移行を後押しする政策を打ち出しています。

まとめ

現在、自動車産業は「燃費改善」から「脱炭素化」という、より根本的なパラダイムシフトの渦中にあります。
自動車の脱炭素化に向けた道のりは、EV一辺倒ではなく、多様な技術的アプローチが模索されており、もはやEVやPHVやFCVやHICE、合成燃料(e-fuel)といった一つの技術が全てを席巻する時代ではなく、各技術の長所を活かし、用途や地域に応じて共存する「マルチソリューション」の時代に向かっていると考えられます。

単一の技術に固執するのではなく、多様な選択肢を許容し、それぞれの技術が最も効率的に機能する領域を見極めることが、持続可能なモビリティ社会を実現する鍵となっていくことでしょう。